「あんな最低男!すこっしも、つめの垢ほども優しさなんてないろくでなし男よ!」




≪さ、沙耶?≫



突然怒りを露わにした沙耶に、あゆみは当惑する。




「あんなのが地球に居たら人類滅亡よ!」



≪なに、どうしたの?何かあったの?≫



困惑したような声で、あゆみに訊ねられ、沙耶ははっとした。



「ご、ごめん。ちょっとね、いいの、こっちの話。とにかく、あゆみ。もしも何かあったら連絡ちょうだいね。」



≪何かって?≫



「!えっと、何かって言ったら何かよ!じゃ、また連絡するね!」



あゆみは戸惑いを隠せないようだったが、沙耶は気づかない振りを決め込んで、半ば強引に会話を終了させた。




―どういうことだろう。



沙耶は暗くなった待ち受けを見つめながら、首を傾げる。




あの場が社長就任パーティーで。


あの諒っていう男が主役だったとしたら。



確かマスコミもきてたはずだし。


私があんなことしたら、とっくに世間に広まっていてもおかしくないはずなのに。



あゆみすら、知らないなんて。



つまり、従業員達でも口裏を合わせていることになる。




―一体何の為に?



体裁だろうか。仮にも次代を継ぐ若き社長があんなことされたなんて、大きな会社なら許せないだろう。

残念ながら沙耶は石垣グループがどれくらいのポジションなのか、知らないけれど。


でもその分報復はきっとたっぷり―。



そこまで考えて沙耶は首をぶんぶんと横に振る。