暖かな木漏れ日。


壊れた塀の中へ行ってしまった猫を、追いかけて。


青々とした竹林の中へと迷い込んだ。




追っていた猫の姿を見失って、外とは違う静かな空間に見惚れながら、ゆっくりと土を踏みしめていけば。



少しだけ広い空間に出て。



その場に蹲るあの子を見つけた。



最初は、白い猫が、人間に化けたのかと思った。





『…誰?』




声を掛ければ、その小さな肩がびくりと震えて、弾かれたように女の子が顔を上げる。




涙でぐしゃぐしゃになった頬に髪の毛が張り付いていた。



あまりに違う長さに、不思議に思った。


前髪半分と、後ろに少し掛かるくらいの髪がざっくりと切り取られているような―。



―ああそうか。





『誰かに、髪、切られたの?』





だから、彼女は泣いているんだ。



真っ黒な瞳をきらきらと涙で光らせて、自分の事を見ている彼女にそっと近づくと、案の定身構えるように身体を硬くさせた。



同じ目線になって、顔を覗き込んで手を伸ばすと、またびくびくと、まるで叩かれるんじゃないかと怖がっているような仕草をする。



だから。




ゆっくり、ゆっくりと、頬に掛かっていた黒髪に触れた。






『女の子にとって、髪は、宝物なのにね。』