恐らく、過去に何かがあったとすれば、古くから居る佐武は絶対に何かを知っている。
「坂月楓について何か知っていることがあれば教えてもらいたい。」
諒が佐武に期待するのは先代からの忠誠心。
彼は今静かに諒の言葉に耳を傾け、感情を隠す為か、目を閉じていた。
「深雪さんにも会ってきたけど、親父に訊けと言われたんだ。どうしてここに親父が関係してくる?俺にはそれがわからない。親父だってこんな話聞いたって寝耳に水で―」
そこまで言うと、佐武が薄く瞼を開き、首を横に振った。
「…いえ、、巌様は驚かれないと思います。」
「―どういうことだ?」
説明を求めると、佐武はまた沈黙する。
窓を大粒の雨が打ち叩く音が、激しさを増している。
「…坂月様は、ご存知だったのですね…」
やがて雨音に掻き消されてしまいそうな程の声で、佐武は呟いた。
「ならば、今ここで、諒様が知るのも自然の流れなのかもしれませんね。」


