「何か分かったら連絡しろよ。」
カルモを出た所で、孝一が諒に声を掛ける。
まだ雨は降っていないが、空には月が見えない。
「お前が取り戻せなかったら、俺があの手この手で株を全部買い占めても良いし。非公開になってもなんとかしてやるよ。」
「馬鹿言え。」
雷鳴が遠くで聞こえた。
「坂月を甘く見るなよ、諒。あれは頭の切れる男だ。物事を用意周到に運んでいる。隙なんかない。早く止めないと取り返しがつかない。」
「分かってるよ。」
諒が雨雲に向かって伸びをすると、孝一は呆れたように溜め息を吐いた。
「それがわかってるって態度かよ。事態は結構やばいんだぞ。坂月の株の買い占めに反対してるのがどこのどいつか知ってるのか?」
「わかったのか?」
「おいおい、俺に任せっきりにするなよ…」
「悪い、そっちまで手が回らなかった。」
脱力する孝一を、諒が急かす。
「で、誰だった?」
「悠長な奴…」
はー、ともう一度盛大な溜め息を吐いてから孝一は腰に手を当てた。
「なんと諒の嫌いな佐伯邸のご近所さん。あんな近くでよくおっさんに呑まれなかったよな。まぁ、小さな財閥だけど…ある意味そこが頼みの綱って所だ。」
「近所?」
「そう。諒も暫く住んでたことあるんでしょ、顔見知りかもよ?」
顔を顰めた諒に、孝一が続ける。
「秋元家。」


