シンデレラは硝子の靴を

信じたくても、信じられない。


嘘ばかりに囲まれて生きてきたせいか、諒は人を信じられなくなっていた。



楓に関してもそう。


信じて仕事を任せる一方で、疑う心を拭うことができなかった。


信じれば、裏切られた分、傷付くから。


最悪の結果を常に考えていれば、傷付かずに済むから。





苦い感情に支配されそうになって、諒が黙ると。





「そっか。。。本当に、人間っていうのは難しい生き物だねぇ。」




佐伯はそれ以上を訊くでも、否定するでもなく、しみじみと呟いた。




「君たちの痛みを理解できないこんな僕なんかの意見で申し訳ないんだけれど―」



そして、決意したように再び諒を見つめた。




「もしかしたら、全部の出来事は絡まってしまっているだけで、実際は別々なのかもしれないね。」




「―どういうことですか?」




俯いた顔を諒が上げたと同時に、孝一が訊ねる。




「つまりね…繋がりなんて、ないのかもしれないって事さ。繋がりを求めるから物事が複雑化されてしまっているけれど、ひとつひとつを単独で調べてみたら物事は案外単純なのかもしれないよ。」




「ひとつひとつって―…?」


「うーん、そうだな…」



諒が思わず口を開くと、佐伯は人差し指を立てて見せた。




「例えば、今回は親戚に窮地に追いやられてるってことだけど、諒君や孝一君はそれを別の事件と関連づけようとしてる。でもそうじゃなくて、その本人だけに焦点を当てて考えてみる、とか。」




―楓のことを?



今更、何を。




「知っているようで知らなかったことが、見えてくるかもよ。」



珈琲の香りと、紅茶の香りが混ざる。


湯気は弱まって。



「まぁ、年寄りの戯言だけどね。」



閉店時間が近づいた店の主は、照れたように笑った。