「どう思ってるの?」
「ちょっと…佐伯さん、諒に訊かないでください。俺の努力が泡になります。」
唐突にも思える質問に、諒が首を傾げると佐伯は柔らかく笑って続けた。
向かいの席では、珍しく孝一が焦ったような顔をしている。
「孝一君は僕の意見を聞きたいって言っているけれど、諒君はどう思ってるの?」
穏やかな物言いは、警戒心や猜疑心をふるい落とす作用がある。
また、佐伯の礼儀正しさは好感が持てた。
孝一も諒も、かなり年下だというのに、見下す態度はひとつも見出せない。
同時に、孝一や諒の身分を知っていながら、格上の扱いをすることもなかった。
―その上、孝一がここまで信頼しているのなら。
「俺は―、俺も、できたら聞きたいなって思います。もし、、その、、、佐伯さんが良かったらの話ですけど…」
迷いはあるが、ここまできてしまったのだから、もうどうにでもなれと思った。
正直な所、今までで一番最悪な気分だった。
父親の事故。
沙耶との別れ。
楓の裏切り。
父親の事故と沙耶の事故に関しては、楓が調査に乗り出していた。
内部の犯行が疑われ、肇が一番怪しい動きをしていた。
なのに、まさか、楓も容疑者に浮上するとは。
「珍しい。佐伯さんが変なこと訊くから、諒は絶対出て行っちゃうかと思ってた。俺がやんわりと佐伯さんに訊いた時から不機嫌オーラがすごい出てたし。」
「やんわりじゃねぇし。」
そうなの?と佐伯が孝一を見ると、彼は頷く。
「諒は極度の人間不信なんですよ。しかも自分でコントロールできない。」


