シンデレラは硝子の靴を

雨の音が、遠くで聞こえる。




「もう少ししたら―、俺は諒と敵同士になるでしょう。」




その中で、坂月の声は、はっきりと沙耶に届く。


『私』から『俺』へと、口調を変えた彼の。




「そしたら、俺はもう一度貴女に言います。」




決意表明。




「俺が貴女を守ってみせる。」




沙耶の背中に、遠慮がちに回されていた手に、力が籠もった。




「貴女が言う、線は、俺との間には最初からないから。」





だから。



「俺を選んでって。」




「そんな…」




「答えは、今は訊きません。」




突然の事に思考が全く回らない沙耶に、坂月が優しく言った。





「でも…」



言いかけたと同時に沙耶の携帯が震えて。




「行ってあげてください。きっと、駿くんが心配してるんでしょう。引き止めてすいませんでした。」



解放されたカラダ。


漸く合わせた坂月の表情は、いつもの笑顔になっている。




「行って。」



逡巡する沙耶に、坂月はもう一度促した。