シンデレラは硝子の靴を

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「じゃ、私はこれで。」



「色々、ありがとうございました。」



「坂月さん、サンキューでした!」



姉弟揃ってお辞儀した所で、沙耶が駿の頭を叩く。



「こら、駿!もっとちゃんとしなさいよ!」



「いってぇな!ちゃんとしてるだろうが!」




「まぁまぁ…では、何かあったらいつでも呼んでください。」



病院で姉弟喧嘩はまずい。


早くも、周囲の人間の視線を感知した坂月は、とりあえず怒る姉を宥めてから、小さく頭を下げ、早々に踵を返した。



「本当に、助かりました!」



背中に元気な声が掛かって、坂月は背を向けたまま、片手を上げて見せた。


いつもなら、振り返ってきちんと挨拶したいのだが、今は無理だ。


自分の信念に反するし、マナー違反だとは思うが、これ以上何事もなかったかのような表情を続けるのが難しかった。





『よ、よかった……』




二時間ほど前の沙耶の様子が、エレベーターに乗り込んだ坂月の脳裏に浮かぶ。


予断は許されないものの、容態は安定したと伝えられた沙耶は、その場にへたりこんだ。