カチャリ-
アールグレイの香り漂う部屋に侵入すると、沙耶は中央に置かれているベッドの真ん中に居る主に目をやった。
-しまった、メイドに動揺してフライパンを忘れてきちゃった。
しっかりと目を閉じている石垣を見つめ。
-どうやって起こそう…
うーんと考え込む。
真っ暗な病室で、苦しげな声だった石垣。
一体何を考え、何を思っていたのか。
沙耶には知る術がない。
だが、わかった所で、どうするつもりもない。
「―目、覚ましなよ。」
ヒールを脱いで、いつもの定位置まで行って、眠る石垣の寝顔を見つめながら。
兵器のない沙耶は、声を掛ける。
-目を、覚まして。もう、あの頃じゃない。
沙耶の髪が、サラ、と流れ。
「社長、朝です。」
さっきよりも強めに、石垣の肩を叩いた。
薄ら、覗いた彼の目に、内心驚く。
-あれ、意外と普通に起きる-
と思った途端。
ベッドに着いていた手を、取られた。


