シンデレラは硝子の靴を

視察を一通り終えた後は、セレモニーの方の準備に取り掛からなければならない。


と言っても、もう沙耶にできることはなく、お昼の心配をする程度なのだが、式の終わった後振舞われるという軽食まで我慢するべきか迷う。


しかも今見てきた限り、レストラン街も全体的に高い。

フードコートに行けば、幾らか安価なものが見つかるかもしれないが、使わなくていいのなら、極力使いたくない。


会社では、近頃弁当持参で食べているのだが、今日は出になっていた為、荷物になるだろうと持ってこなかった。



「昼、どうする?」




案内の男と話を終えた石垣が、部屋の外で待っていた沙耶に訊ねる。



「どうするって…」



「準備してくれてたらしいんだけど、断ったから」



「へっ!?」



狼狽する沙耶を置いて、石垣はスタスタと先に行ってしまう。



「ちょちょちょちょ、なんで断っちゃったのよーーー!!」



有り得ない、とこぼすと、石垣は露骨に顔を顰めた。



「よく知りもしない人間と堅苦しく飯食って何が良いんだよ。」



「そうはいっても、タダじゃない!仕事でご飯を食べれば良いだけ、なんてめちゃくちゃ良いじゃない!」



「お前は本当にそればっかりだな。別にお前に出させねーから。」



「そういうの嫌なのよ!借りを作った感じがして。」



現に、沙耶はあのフランス料理以来、石垣と食事に行くことはしていない。
石垣自身、多忙の余り、ほとんど食事をしない日も多かった。

秘書としてそこまでも面倒を見なければならないのか、と考えたりもしたが、何しろ石垣のことが嫌いな沙耶は、見ないフリを決め込むことにしていた。


だから。



「…それも仕事の内だ。それなら良いんだろ?」



「うっ…」



これを言われてしまうと、言葉に詰まる。