シンデレラは硝子の靴を


メゾネットな上に、ロフトもあるこのマンションは、当たり前だが沙耶たちには広すぎる。



家電も家具も備え付けで、全体的にモダンな雰囲気である。


お洒落なマガジンラックなんかもあるのだが、何せ、飾るものがない。


仕方ないので、とりあえず料理本と駿の漫画雑誌を並べてあるが、イマイチ空間に溶け込んでいない。



来た当初は、今時のテレビの薄さと大きさにも驚いたものだ。


アパートではテレビなんて無かったし、本家に居た頃はブラウン管のものを使用していたが、地デジ化と同時に見れなくなり、そのままだった。




「えぇー、アウトかよぉ!」



チンしてもらった餃子を口に頬張りながら、沙耶は大画面で野球観戦に白熱する駿を見つめる。



テレビがバスルームにもあったのを思い出して、眩暈を覚えた。



「なんて無駄だらけの家なの…」



ドラマに出てくるかのような洒落た部屋だが、今までとの余りのギャップに自分の定位置を掴むことができない。


あの不釣合いなマガジンラックと漫画のように、自分がこの家に馴染むことは一生ないのかもしれないとふと沙耶は思う。



何でも揃っているこの家は、何故か物足りなさを感じさせるのだ。



「…そういやさぁ…」



CMになった途端に、こちらを振り返った駿の箸が、餃子に突き刺さる。



「駿、行儀悪いよ。…何?」



軽く窘めると、駿がじっと沙耶の顔を見つめてくるので、自然と眉間に皺が寄った。