シンデレラは硝子の靴を

「えっ、えとっ…出迎えか―」



慌て過ぎて蹴躓きそうになりながら、沙耶はエレベーターホールまで走る。



ちょうど、到着を知らせるエレベーターのランプが光って、扉が開く寸前に沙耶は待ち姿勢をかろうじて取っており。




「お、ぴったりだね。」



中から降りてきた柔らかく微笑む長身の男に、目を瞬かせる。



―どんな醜い顔の男かと思ったら。



色素が薄く、長めの髪。


茶色くて大きな瞳はさも優しそうで。


甘いマスク。



さぞかし世の中の女達からもてはやされているに違いない。



同じモデルのような顔立ちでも、石垣の目は挑戦的で、威圧感があり、切れ長。


どちらかと言えば、坂月の印象に近いものを感じる。



「先日は結構な挨拶をどうもありがとう。今日は挨拶はなしなのかな?」



完全な厭味を言われている筈なのに、厭味に感じない風貌。



「はっ!」



口を開けたまま、固まっていた沙耶は我に返る。



―いかんいかん!見惚れている場合じゃなかった!



「せ、先日は知らなかったとは言え、大変失礼致しました。初めまして、秘書の秋元と申します。本日も下まで出迎えに行かず、重ねてお詫び申し上げます!」


がばりと頭を下げると、そこにくすくすと笑い声が降りかかる。


「そんな堅苦しい挨拶しなくていいし、迎えに、なんて気遣わなくていいから。俺こそ、新米の秘書さん相手に悪戯が過ぎたしね。でもこれで正体がわかって安心したでしょう?」



―な、なんて良い人なんだ…


構えていた分、予想外の嘉納の物腰の柔らかさに、沙耶は自分が恥ずかしくなった。