シンデレラは硝子の靴を

「情報としてひとつ、お伝えしておかなければならないのが、恐らく坂月様が仰られているとは存じますけれど…ご主人様は寝起きが、とても悪くいらっしゃいます。」



どこの王室かと聞きたくなるくらいの階段の中腹で。




―聞いてないよっ!?



っていうか、良い年して自分で起きろよっ。



と、叫びたいのを、沙耶は必死で堪えた。




「こちらの屋敷に移った頃は、ご主人様を起こすのは私達メイドの仕事でした。ですが、朝のご機嫌が余りにひどくいらっしゃるので、次々にメイドが辞めていってしまうのです。」



「え!?」



中村の口調は穏やかで静かでゆったりしているのだが、内容が内容だけに、ついに沙耶の口から言葉が出てしまう。




「それからは、ご主人様を起こすのは、秘書の仕事になったのです。」




「な、なんでですか?」





沙耶の問いに、階段を上りきった所で中村が振り返る。




「怪我をすることになるので…」




―はぁ?!




「ですから、ご主人様の秘書はずっと男性の方でしたのに…」




首を傾げているが、傾げたいのはこっちだと沙耶は呆れた。