「………」

なんであんな所にあの男がいるんだ…



それは数分前


HRが終わり、それぞれ帰りの支度を始めている

明日奈と雅は…


「アハハハ!何言ってるの!!」


そこには、とても楽しそうに笑ってる明日奈の姿があった。

その隣には雅の姿もあった
その姿は心なしに楽しそうだった


あの様子ならあまり心配はいらなそうだ


そう考えながら鞄を持って教室を出た



そこまではよかった



「マジで!ちょ~ラッキーなんだけど!!」


靴を履き替えているとそんな騒ぎ声が聞こえた

声を出してる女子の視線の先に目を映すと


そこには

自分の遥か数メートル先に校門に寄りかかっているあの男の姿があった。


滝川 統也


「……」


なんであんな所にあるんだ…


その姿は誰かを待ってるようだった

“…ちゃんとかぶっとけ”
“男に襲われるっていうのはこういうことだ”

って何でまた思い出してるんだ…


この男のことになると妙に落ち着かない

それに
あの人とどことなく似ている…


だから関わりたくない


いや、
関わってはいけない



そして滝川 統也の前を通り過ぎようとした瞬間


「…待て」


ビック


呼び止める低い声に、思わず反応してしまった


なぜ反応したのかわからない


ただ
甘く響くこの低い声に反応してしまった


「こっちを向け河神 真紘」


渋々振り返るとそこには昨日と同じ吸い込まれそうな透き通った瞳と他の人達とは違う雰囲気の滝川 統也がいた


「…何の用」

「……」


人を呼び止めておきながら何も言ってこない


いったいなんなんだこの男は…

帰ろうとした瞬間


「…お前は何を隠してる」


ピクッ


「いや、正確には何を抱えてる」


この男は何かを感づいてる…


だからといって言うつもりもないが


あの吸い込まれそうな透き通った瞳がジッと見つめてくる

その瞳はまるで何も見透かされているようだ…

まさか


「…用はそれだけ?」


この男はそれだけの為にここで待っていたのか

なぜ…


帰ろうとした瞬間腕をつかまれた


「逃げるな 真紘 」


真っ直ぐあの瞳が私を捉える


「…私に関わるな」


それだけを言い残しこの男の手を振り払ってその場を後にした



最後に見た彼女の表情が彼の心に深く刻まれた…