「ゆーき」

 木の上でぼんやり空を眺めていると、琉菜が登ってきた。

「これからのこと考えてた」

「これからのこと?」

 この世界だって新たな方向に進んでいく。いつまでもこのままというわけにもいかないからな。

「まず、龍ノ宮は人間たちと共存する必要があると思う」

 いつまでもこんな山奥で暮らすわけにもいかないからな。

「まあ、確かにそのほうが暮らしやすいだろうね」

「ああ。って言ってももうしばらくはこのままでいないといけないけどな」

 私たちの存在を知っている奴が数名いるからな。

「そうだね。で、雪は何やるの?」

 えっ?

「何かやりたいことがあるんでしょ?」

 全部お見通しかよ。

「うん。医者になりたいなって思う。……そうしたら、治せない病気も、酷い怪我も治せるだろ?」

「雪……」

 総司の病気だって、治せるようにしたい。

「そのためには勉強だな」

「そうだね」

 こんなふうに思うとは思わなかったな。

「雪、変わったね」

「そうみたいだな」

 人間を救いたいだなんて。

「新撰組の人たちのおかげだね」

「……ああ」

 影響力が大きすぎるんだよ、あの人たちは。

「今の雪、好きだよ」

「前の私は好きじゃなかったのか?」

「前の雪も、今の雪も、これからの雪も、みーんな好き」

 琉菜……。

「ありがとな」

 優しいな。

「私も琉菜好きだよ。いつも傍にいてくれてありがとう」

「いーえ」

 これからも、こんな生活が続けばいいな。