「お前は立派な武士だよ」

 ちゃんと戦い抜いたんだから。

「ありがとな、約束守ってくれて」

 最後に会えてよかった。

 頬に温かいものが流れた。

「涙……?」

 どうしてこんなものが……。

「悲しい……のか?」

 私が?

「人の死は、もう見たくないと思ったんだがな……」

 大切な人が死ぬのは、やっぱり嫌だな。

「私は案外、お前のことが好きだったみたいだ。仲間として」

 そんな満足そうな顔して。

 そっと冷たくなった頬に触れた。

「安らかに、眠れ。いい旅を」

 これからどんどん命の灯が消えていくんだな。

「もう出てきていいぞ、琉菜」

「なーんだ、気付いてたのか」

 ひょっこり琉菜が木の陰から出てきた。

「当たり前だろ。どれだけ一緒にいると思ってんだ」

「それもそうだね。ちゃんとお別れできた?」

「ああ」

 言いたいことは言った。

「……他の人には会わなくていいの? 特に副長さんには」

「あの人には江戸に行く前に言った。私からは会いにいかない。総司はただ単に止めにきただけだから。死に目を見に来る予定じゃなかった」

 まだ、生きていてほしかった……。

「思う存分泣きな。悲しみは、ちゃんと外に出しとかないとね」

 そっと抱き締め、優しく頭をなでてくれる琉菜。

 温かい。

 私は彼女の胸で、静かに、声を押し殺して泣いた。

 命はとても、儚いものである。