「総司、体調はどうだ?」

 近藤さんが入ってきた。

「近藤さん、毎日毎日来なくても大丈夫ですよ。ゴホッ、ゴホゴホッ」

 忙しいだろうし。

「いいんだよ。総司とも話せるしな」

 近藤さんらしい。

「近藤さん」

「なんだ?」

「僕はもう、戦場で戦えないんでしょうか?」

 馬鹿だな。こんなこと言ったら、近藤さんが困るのわかってるのに。

「戦場で戦えなくても、お前は毎日戦ってるじゃないか」

 そう来ますか。

「医者にはもう死んでもおかしくないって言われてるんですよ。体としても限界だろうって。それでも、まだ死ぬ感じがしないんですよね」

 理由はわかるけど。

「それは、神田君のことが関係しているのかい?」

 そういうところは鋭いんですね。

「……そうですね。ゴホゴホッ。……僕はまだ死ぬわけにはいかないんです。彼女に、言われてしまいましたから。病気に負けるなって」

 死ぬなら、戦って死ねって。

「そうか。神田君は、今どこにいるんだろうね」

「さあ? ふらふらしてそうですよね」

 きっと君は、もう京にはいない。

「そうだな。それでふらっと帰ってきてくれればいいんだが」

 そうしたら、きっとみんな喜ぶんだろうな。

「そういえば、薬の研究は中止になったんですよね?」

「ああ。幕府の研究所が燃やされたらしい。全焼だそうだ。神田君がここを去ってすぐだな」

 それをやったのは君なのかい? 雪ちゃん。

「すぐなら雪ちゃんには無理ですね。ここから江戸まではだいぶかかりますから」

「そうだな」

 それは人間ならの話だ。きっと雪ちゃんなら……。

「じゃあ総司、ゆっくり休むんだぞ」

「わかってますよ」

 近藤さんはそう言って出ていった。