「ここは……?」

「神田と神宮寺は、もともとは同じ一族だったんだ。だが途中で一族内で対立が起きて、1回できた溝は年を重ねるごとに大きく深くなっていくばかり。そこで分裂して、神田と神宮寺の二つに分かれた。元の名は、龍ノ宮(りゅうのみや)。ここが、その本家」

 前方に大きな建物が見えてきた。

 えっ? なんで……。

「おかえりなさい。雪、琉菜」

 茶色の髪を後ろの低い位置で結んだ緑色の瞳を持つ女性が出迎えてくれた。

「お母さん!」

 えっ!?

「美冬(みふゆ)さんって、琉菜のお母さんだったの!?」

 そういえば私、美冬さんの名字知らないや。

「雪、知ってるの?」

 だって……。

「雪は私の姉の娘。つまりあなたの従姉妹よ、琉菜」

「えー!?」

 へ、へえー。私たちって従姉妹だったんだ。へえー……。

「どうして神田がここに?」

「神田だけじゃないよ」

 この声……。

「冬樹!」

 ってことは……。

 その後ろには神宮寺と宮島がいた。

「どういうことですか? 美冬さん」

「神田はあなたたちを含めて16人、神宮寺は13人しか残ってなくてね。だからこの機会に昔に戻ろうと思って」

 それって……。

「名を龍ノ宮に改め、ここを本家とします」

 和解したってこと?

「当主にはあなたを推薦するわ」

 えっ!?

「何言ってるんですか? 私はだめですよ。そんな資格ありません。だって私は……」

 みんなを見捨てた……。

「みんな怒ってないわよ。幼かったあなたの選択に間違いはなかったわ」

 でも……。

「いいじゃん、当主。そしたら私が側近やってあげる」

 琉菜……。

「私もそれに賛成だ」

 神宮寺……。

「わかりました。龍ノ宮の当主、お引き受けいたします」

 みんなが幸せになれるように。

「神宮寺、これ……」

 血液の入ったカプセルを渡した。

「……燃やしてくれ。それに私はもう神宮寺ではない。海里と呼んでくれ」

 あっ、そうだった。

「ああ」

 カプセルを全て燃やした。

 私はずっと、神田だけが被害を受けたのだと思ってた。でも本当は違ったんだな。神宮寺も、私たちと同じだったんだ。

「……お前、新撰組を抜けたのか?」

「ああ」

「あんなに大切にしていたのにか?」

 しかたない。私は、あそこにいるべきじゃないんだ。

「今でも大切だが、彼らと私とでは、進む道が違うからな」

 時の流れも違うし。

「だが、彼らの誇りはちゃんと受け取った」

 誠の武士は、永遠だ。