「琉菜」

「待ってたよ、雪」

 狼から人間の姿に戻った。

「ぎりぎりだね」

「悪い。いろいろとあってな」

 ここまで来るだけで疲れた。

「行こうか」

「うん」

 研究所に向かった。

 ……中に20人くらいいるな。

「狩るぞ」

「うん」

 こっそりと中に入り、ある研究員の後ろをとった。

「長はどこにいる」

「だっ……誰ですか!?」

 ちっ……。とっととおとなしく吐けよ。

「吐かねえと殺すぞ」

 思いっきり殺気を出した。

「こ、この先の部屋に……」

 よし。

「あとは頼んだよ、琉菜」

「うん」

 長のところに向かった。

「ん? 勝手に入ってくるとは、誰だ?」

 冷静だな。

「お前を殺しにきた」

 刀を抜き、首に突きつけた。

「な、なぜ私を……」

 ……先程の言葉は取り消そう。冷静でもなんでもないな。どこにでもいる普通のくずだ。

「研究を終わらせるために決まってるだろ」

 我々の力を手に入れようなどと、哀れな行いだ。

「しょ、将軍からの命令なのか!? お前、大目付の者だろ!?」

 ほおー、私のことを知っているのか。ということは幕府側としては結構上の奴だな。

「違う。私の独断だ。……一つだけ聞く。お前は龍神と呼ばれる種族を知っているか?」

「ああ。研究材料としてそいつらの血を使わせてもらった。いい実験材料だったさ」

 こいつ……!

「そうか。――死ね」

 そいつの首を斬り落とした。

「雪、終わったよ」

「うん。出よう」

 研究所の外に出た。

「我が血よ、我が言霊に応えよ。全てを焼きつくし、全てを塵と化せ」

 炎が研究所を包み込み、みるみるうちに塵となっていった。

「雪、これ」

 琉菜の手には血液が入ったカプセルがいくつか握られている。

「神田のものと、神宮寺のものもあるな……」

 まさか……!

「神宮寺も実験体になんてたんだね」

「……らしいな」

 やはり、人間は嫌いだ。

「これからどうする? この血も」

 神田のものだけ手に取り、それを燃やした。

「雪……」

「もう悪用されたくねえから。それにいい加減、安らかに眠りたいだろ」

 救えなくて、ごめんな。

「神宮寺のはどうする?」

「本人に聞くのが一番いい」

 当主が決めるべきだ。

「でも場所が……」

「大丈夫、心当たりがある」

 たぶんもう本家にはいない。

「わかった。行こう」

「ああ」

 私たちはある山の奥深くに向かった。

 ……私は、道を間違えてばかりだ。