……総司、寝たよな。

「病気なんかに負けたら、許さないよ。あんたは立派な武士なんだから、最後まで戦い続けろよ」

 荷物を持ってこっそり部屋を出ようとした。

 ……っ!

 だが、腕を掴まれてしまった。

「どこに行くの? 雪ちゃん」

 ……起きてたのか。

「もう私はここにはいられない。お別れだ、総司」

 私には、やるべきことがある。

「お別れ? 僕がそんなこと許すと思う? この手は絶対に離さないよ」

 総司……。

「総司、私たちはいつかは別れる運命なんだ。お前たちと私とでは時間の流れが違う。わかっていたはずだよ、総司」

 頭のいいお前なら、きっと……。

「ねえ、なんでそんな口調なの? いつもみたいに荒々しくないのは、どうして?」

 それは……。

「雪ちゃんってさ、自分に言い聞かせたり嘘つくときって、そういうしゃべり方するよね。今のは前者のほうかな」

 相変わらず鋭いな。

「その通りだよ。でも、だからって決断を変えることはしないよ」

「どうして? ここにいたいって思ってるんでしょ?」

 そうだけど……。

「それでも、ここにはいられない。いい加減離して」

「離さない!」

 振りほどこうとしたが、もっと力を加えられた。

 ちっ……。

「ごめん」

 腕をひねってほどいた隙に手刀で気絶させた。

「じゃあね、総司」

 布団に戻し、荷物を持って今度こそ部屋を出た。

 なんか冷えると思ったら雪降ってんじゃねえか。……厄介だな。とっとと行くか。

 そのまま部屋を出て江戸に向かった。