「お待たせしました、土方さん。始めましょうか」

 お手並拝見といこう。副長はそう簡単にはやられてくれないだろ。久しぶりに楽しめそうだ。

「そうだな」

 お互い木刀を構えた。

「試合、始め!」

 その合図とともに土方が腰を低く落とし、相手に向かって半身の姿勢をとり、刀身を地面に水平な状態にした。

 あれは……平突き。あの状態から刺突を繰り出すことで横に動いて避けられても即座に横薙ぎへ派生して追撃を可能とする。

 こいつが考案したとは聞いていたけど、ここで使ってくるとはな……。

「一瞬で終わらせてやる」

 その攻撃は横と正面。空中、またはそれより早く動けば問題ない。

 平突きが繰り出された。

 ……予想以上に速い!

 瞬時に体勢を整え、それを寸前で避けた。

「これを避けるとはたいしたもんだ。だが、これで終わると思うな!」

 木刀を鋭く振るってきた。

 ちっ……。

 それをぎりぎりのところで受け流した。

 ……やっぱ速いな。さすが副長。

 それからずっと土方の攻撃を受け流し続けた。

「そんなことしてたって俺には勝てない!」

 勝てるさ。

 彼はまた平突きの構えになった。

「これで終わりだ」

 平突きが繰り出された。

 ……さっきよりも速い! ……まだ速くなるのかよ。

「何っ!?」

 今度は避けることはせず、そのままそれを受け止めた。

 はい、終わり。

 固まっているのをいいことに、土方の足に木刀を強く打ちこんだ。

「うっ……」

 これで少しの間動けないでしょ。

「すぐに動けるようになりますので、少し我慢してください」

 油断しすぎなんだよ。もうちょっと頭使えよな。それとも私のことなめてんのか?

「勝者、神田」

 平突き、結構威力あったな。うん、いい経験ができた。

一息ついたとき、沖田がこちらに歩いてきた。

「ねえ君、僕と勝負してみない? まだ土方さんは動けないんだし、今後の話しようにもできないでしょ?」

 彼はここでは上位の実力者。そいつからも1本とったとなれば上位の位置につける可能性がより高くなるかもしれない。

「私は構いませんが。……土方さん、よろしいでしょうか?」

「……許可する」

 こんなにわくわくするのは久しぶりだ。