「雪」

「何?」

 幹部が来てから数日が経ったが、私は未だに怒っている。

「雪、まだ怒ってんの? ごめんって。一度でいいから見ておきたかったんだもん。雪が守ってる新撰組の幹部の人たち」

 守ってる?

「ふざけんな。守るなんて、そんな面倒なことするわけねえだろ。彼らにはまだ利用価値があるし将軍の命令だからってだけ」

 倒幕派の奴らを1人でも多く殺す、それが私の目的。

「はいはい。……後悔しないようにしなよ」

 後悔なんてするわけないだろ。

「標的さん、来てるよ」

 嘘!

「本当!?」

「うん。ほら、行こう」

 はあー、やっと仕事ができる。

「失礼するどす」

 そう言って襖を開けた。

「雪どす。よろしゅうお頼申します」

「鈴どす。よろしゅうお頼申します」

「見ない顔だな。新入りか」

 さすが常連。すぐに新入りってわかるか。

「はい」

 さて、始めるか。

 世間話をしながらもちょくちょく情報収集をしていった。

「鈴、あとはよろしゅう。あたしは別の用があるで抜けさせてもらいます」

 彼女に片付けを任せ、標的のあとを追った。

 当然恰好は着物ではなく黒装束。ちゃんと武器も持ってきてるからもし戦うことになっても問題ない。

 標的は島原から少し離れた小屋に入っていった。

 ここに長州の奴らがいるのか?

 ここであの2人を殺るのはこちらとしてはよくない。情報を入手するのを最優先としたほうがいいか。

 ……奴らは歩かせて、明日の朝ここにいる者を消すとしよう。

 こっそりと島原に戻った。

「雪、どうだった?」

「当たり。ちゃんと見つけた。でもあそこだけだとそこまで戦力減少は期待できない。あともう一つぐらい知っておきたい。だから明日の朝動く。琉菜も手伝ってくれる?」

「もちろん!」

 さあ、獲物は罠にかかってくれるかな?