捜査を初めて数週間。まだ標的は来ていない。

「雪、ここよろしゅう」

「はい」

 そう返事をしてその部屋の前に座った。

「失礼するどす」

 そう言い襖を開けた。

 なっ……!

 顔を上げてみるとそこには予想外の人たちがいた。

「……雪どす。よろしゅうお頼申します」

 落ち着け。焦るな。ここは冷静に。

 ……なんで、なんで新撰組の幹部がこんなところにいんだよ!

「2人頼んだと思うんだが、1人なのか?」

 もう1人はたぶん琉菜だ。琉菜と接触されるのは困る。ここは1人でやるか。

「申し訳おまへん。えんばんと今、お客様がぎょうさんいらしとるので、皆様のお相手はあたしが務めさせてもらうで」

 まず琉菜に状況を説明しないと。

「お酒をお持ちしますので、少々お待ちください」

 そう言いそこを出て、急いで琉菜を探した。

「鈴!」

「雪、そないに急いでどうしたんどすか?」

 大量のお酒を持った彼女がきょとんっとした顔でそう聞いてきた。

「今から相手をするのは新撰組の幹部の人たちやし、万が一のことを考えて、あの人たちのお相手はあたしがやります。くれぐれも、沖田はんとは会わんようにお願いします」

 私だけでも十分やれる。

「わかりました。油断せんようにしてくださいね」

「はい」

 お酒を受け取りに行ってから、再び部屋に戻った。

 琉菜が持っていたお酒は別の部屋に持っていくらしい。