孤独な少女と誠の武士

 島原に行くと、前来たときのような甘ったるい雰囲気は感じられなかった。昼だからか?

「すみませーん」

 目的の店に入り、そう声を出した。

「あなた、今日から入る新人さん?」

 黒い着物を着た綺麗な人が出てきた。

「はい。よろしゅうお頼申します」

 そう言い一礼した。

「今日からあなたには、この子と一緒にやってもらうわ」

 その女性の後ろから、白い布地に花びらの模様がある着物を着た、よく知った顔の人物が現れた。

「鈴(すず)どす。よろしゅうお頼申します」

 どうしてここに……。

「そういえば、あなたの名前を聞いてなかったわね。名前を教えてもらえる?」

「雪どす」

 普通は本名と変えるんだが、面倒だからいいか。

「わかったわ。じゃあ鈴ちゃん、あとは頼んだわよ」

「はい」

 店主のような女性は店の奥に行ってしまった。

「で、どうしてここにいるのかな? 琉菜」

 ギロッと睨んだ。

「そんな睨まないでよ。将軍からの命令なんだから」

 命令?

「任務なの?」

「うん。雪のサポートしろって」

 潜入するのは一応報告しといたけど……。

「なんでここだってわかったの?」

「情報収集力は私のほうが上。すぐに収集できたわよ」

 報告してから山崎がこの店を突き止めるまで結構時間かかったもんな。

「さてと、着替えに行こうか」

 もう着替えるの?

「えー」

「ほらほら行くよ」

 まだよくね?

 無理やり店のある一室に連れていかれ、赤色の着物を渡された。

「はい、着替えてね」

 はあー、しかたないな。

 しぶしぶ渡された着物に着替え、髪を結ってかんざしを刺した。

「雪、綺麗ー!」

 そんなきらきらした瞳で見るなよ。……恥ずかしいだろうが。

「……ありがとう」

 さて、潜入開始だ。