「雪ちゃん、土方さんが呼んでるよ」

「わかった。ありがとう」

 なんの用だ?

 土方の部屋に向かった。

「神田です」

「入れ」

「失礼します」

 そう言って中に入った。

「用件はなんだ?」

「頼みにくいんだが……」

 ん?

「なんだよ、はっきりしろよ」

 土方らしくないな。

「潜入捜査を、やってもらいたい」

 それなら今もやってるが。

「構わないが、場所はどこだ?」

「…………島原に」

 あそこの空気は苦手なんだが……。

「理由は?」

「長州の桂小五郎と吉田稔麿がよく島原に出入りしているという情報が入ってな。潜入捜査をすることになったんだ」

 で、女のほうが面倒事にならなくて済むと。

「わかった。引き受ける」

 将軍の敵は早めに消しておかないとな。

「だが、遊女になるんだぞ!? いいのか?」

「問題ねえよ。お前は新撰組の副長だ。新撰組のため、近藤さんのために動いてればいいんだ。それが副長の仕事だろ。私はそのためのただの道具だ。使うも捨てるもそれはお前が決めることだろ」

 道具は使われなければないのと同じだ。

「俺はお前のことを道具と思ったことはねえ。仲間だと思ってる。だから……仲間として、力を貸してくれ」

「ああ」

 あそこに潜入するのは久しぶりだな。