「失礼します」

 そう言い襖を開けた。

「空いた器を下げに参りました」

「すまないね、神田君」

「いえ」

 近藤の傍に置いてあった器をおぼんに乗せた。

 これで全部かな?

「失礼します」

 器を下げ、そこから出た。

「そこの方」

 台所に向かおうとしていたところで、聞き慣れない声が後ろから聞こえてきた。

「どうかしましたか?」

 声をかけてきたのは伊東だった。

「これ、下げ忘れてましたよ」

 彼の手にはお皿が握られている。

「すみません。ありがとうございます」

 そう言ってそれを受け取った。

「……なぜあなたのような人がこんなところにいるんですか? ここはあなたのような人が来るところではありませんよ」

 こいつ、一体何を……。

「ねえ……」

「伊東さん」

 彼の言葉を遮り、土方が声をかけた。

「何やってんだ。早く戻ってきてくれよ。伊東さんがいなきゃ話が進まないだろ」

「ええ、すぐ戻りますわ」

 ふうー、助かった。

 ……それにしてもあいつ、何を知ってるんだ? あいつに会った覚えはないしな。一応警戒しとくか。