「……神田?」

 ん?

 出入り口のほうを見ると、そこには斎藤が立っていた。

「斎藤さん、どうしたんですか?」

「稽古でもしようと思ってな」

 こんな時間から?

「熱心なんですね」

「それはお前のほうだろ」

 そんなこともないと思うが。

「神田、よければ俺と試合しないか?」

 そういえば斎藤の実力は知らないな。

「構いませんよ」

 確か沖田と同等の実力者なんだっけ。

「手加減はしない」

「はい」

 お互いに刀を構えた。

 今回は真剣だから土方のときみたいに痺れさせることができねえんだよな。さて、どうしたものか……。

「試合中に考え事とは、随分と余裕だな」

 刀を鋭く振るってきた。

 危なっ……。

 ぎりぎりのところで避けたものの、前髪が少し切れた。

 本当に手加減なしだ。私を……殺す気でいる。

「余裕なんかじゃ、ありません、よ」

 予想以上に速い。攻撃する余裕がない……。

「全然隙がないです、ね!」

 しゃがんで避け、そのまま斬り込んだ。

「そのない隙に無理やり突っ込んでくるお前は、それ以上にすごいな」

 すんなりと受け止められてしまった。

「これで決めさせてもらう」

 平突きの構えになった。

 これを得意としているのは斎藤のほうだったな。

 彼は一気に間合いを詰めてきた。

 なっ……! 土方の何十倍も……速い!

「なっ……に……?」

 それを素手で受け止めた。

「すみません、斉藤さん。ずるをしてしまいました。斎藤さんの勝ちですね」

「銀色の髪に赤色の瞳……鬼神と瓜二つだな」

 我々龍神の血が入っているだろうからな。

「これが私の本来の姿です」

 とっさだったからつい解放しちまった。

「そうか」

「お手合わせ、ありがとうございました。またお願いします。では、失礼します」

 ぺこりを頭を下げて道場を去り、器を下げに向かった。