黒色の長髪を後ろの低い位置で一つに束ねた薄い紫色の瞳を持つ男性、伊東甲子太郎(いとうかしたろう)とその一派が新撰組に入隊した。

 今日は近藤と土方、山南、伊東が今後のことを話し合うらしい。

「雪、頼みたいことがあるんだが」

 ん?

 庭で素振りをしていると、土方が声をかけてきた。

 ん? 雪?

「お前はいつから私を名前で呼び捨てするようになったんだ?」

 前までは神田だっただろ。

「別になんと呼ぼうと俺の勝手だ」

 まあそうだな。

「で、頼みたいことってなんだよ」

「あー、今晩伊東さんたちと飲むんだけどよ、料理とかを運んでくんねえか? 他の奴に頼むのは心配でな」

 ……あー、なるほど。

「わかった」

「女だってばれんじゃねえぞ」

 誰に言ってやがる。

「当然だろ」

 ばれるわけがない。

「じゃあ頼むな」

「ああ」

 料理の準備もしとかねえとな。

 話し合いの数時間前から料理を作り始め、酒と一緒に部屋に持っていった。

「ありがとな。時間を見計らって下げに来てくれ」

「はい」

 さてと、余った時間どうしような。……この時間なら道場も誰もいないか。

 道場で素振りを始めた。