「総司。一応言っておくが、私はお前の気持ちには応えられない」

 私は恋だの愛だのという感情は持ち合わせてはいない。

「……返事、結構早いんだね。もうちょっと悩んでくれるかと思ったんだけど」

 早いほうがすっきりしていいと思うんだが。

「悪いな」

「やっぱり雪ちゃんは、土方さんのことが好きなの?」

 はっ?

「どっからそんな意味のわからない的外れな言葉が出てくるんだ?」

 私が土方のことを好きなわけがないだろ。

「だって雪ちゃん、土方さんと僕たちに対する態度違うし」

 それだけかよ。

「土方を上司だと思ってないからだろ」

 それ以外に思い当たる理由はない。

「土方さんといて鼓動が速くなったり緊張したりしないの?」

「全く」

 なんでそんな面倒なことにならねえといけねえんだよ。

「――新撰組の幹部の中で一番死んでほしくないと思うのは誰?」

 ……っ!

 真っ先に頭に浮かんだのは……土方の顔だった。

「今浮かんだ人が、雪ちゃんの好きな人だよ」

 なっ……。

「勝手に決めてんじゃねえよ、そんなことあるわけないだろ」

「雪ちゃんってさ、本当は人が死ぬの嫌でしょ」

 はっ?

「何言ってんだ? 私は今まで数多くの人を殺してきた。今更そんなことがあるわけないだろ」

 なんで悲しまなきゃいけねえんだよ。

「池田屋から出ていくとき、君は悲しそうに負傷者を見ていた。そして運ばれていく仲間の死体を見たとき、すごく悲しそうだったよ。平気で人を殺す奴のする目じゃないよ」

 なんでそんなところまで見てんだよ。

「雪ちゃんは冷静だから緊張したりすることがないのかもしれない。だから死んでほしくない人、それほどまでに大切だと思う人を聞いたほうが信憑性が高いんだよ。どうでもいい人に死んでほしくないとは思わないからね」

 私が、土方を……好き……?