「……今日は新月だね」

 沖田がそう話しかけてくるが、私はそれを無視した。

「……龍、いい加減何か反応してよ」

 無視。

「龍?」

 目を合わせようとしてくるが、それもそっぽを向いて回避した。

 どんな顔すればいいかわかんねえし、どうやって答えればいいのかもわかんねえ。

「……殺気を感じます。ちょっと見てきます」

「龍!?」

 沖田との居心地は悪いし、こういうときに限って新月だし。あー、今日は最悪だな。

「……こんなところに長州の奴がいるとは思わなかった」

「……新撰組!」

 さてと、今日は捕まえるまでにしとくか。

 斬って誰かに見られると厄介だからな。

「あなたたちには一緒に来てもらいます」

 長州の奴数人に数回打撃を加え、最終的には全員気絶させた。

 さてと、こいつらどうしような。一気には屯所に連れていけないしなー。

「へえー、これは驚いた」

 がばっと後ろを向くと、そこにはにこにこしている沖田がいた。

 しまった……。

「これを見られたくなくてわざと1人で向かったのかあ」

 耳を触りながらそう言う沖田。

 なんで見えてんだよ……。

「沖田さん、なんでこれが見えるんですか?」

 新月だから月明かりはない。つまりほとんど明かりがない状態だ。この暗がりで、なんで耳が見えてんだよ。

「暗いところは慣れてるんでね。狼の耳と尻尾、ちゃーんと見えてるよ」

 あー、やっぱりこいつは苦手だ。

「……何たくらんでるんですか?」

 嫌な予感……。

「このことは秘密にしておくからさ、その代わりに名前呼び捨てと敬語なしね」

 はあー、やっぱりか。だがそれでこのことを黙っててくれるのならまだ軽いほうだ。これ以上力については言う気はないしな。

「……わかりました、引き受けます」

「さっすが雪ちゃん、わかってるね」

 新撰組の中で一番危険なのは、やっぱりお……総司だな。

「どうも」

「それじゃあ、そこで眠ってる人たちも連れて戻ろうか」

「はい」

 長州の奴らを担ぎ、屯所に戻った。

 あー、総司の記憶を今すぐにでも消してえ。