――「黒幕は……幕府だよ」

 冬樹の言った言葉が頭から離れない。

「……ちゃん、雪ちゃん!」

 はっ!

 洗濯をしていたら急に横から声がした。

「あっ……沖田さん」

 どうしたんだ?

「雪ちゃん、最近ぼーっとしすぎだよ」

 禁門の変以降、冬樹の言葉が気になりすぎて集中力低下したもんな。

「すみません。気をつけます。で、ご用件はなんですか?」

 今は仕事中だ。私情は持ち込まないようにしないと。

「門のところで女の人が待ってるよ。雪ちゃんと同じ歳ぐらいの」

 まさか……!

「わかりました! ありがとうございます」

 急いで門のところに向かった。

「琉菜!」

「ゆ……」

 名前を呼ばれる前に口を塞いだ。

「ここでは龍」

「あい……」

 返事と同時に手を退けた。

「まず場所変えよ」

 誰かに聞かれたらまずい。

「うん」

 屯所から離れたところに移動した。

「で、なんで新撰組の人と接触してんの! 屯所にも来るなって言ったでしょ!」

 しかもよりにもよって沖田。

「将軍から手紙預かったからさ。なるべく早く渡すように言われたし」

 将軍から?

「はい、これ」

 手紙を受け取り、すぐに読んだ。

 そこには倒幕派の戦力低下と薬の調査の指示が書かれていた。

 このままの状態でいいんだな。薬を飲んだ奴、鬼神は使えないって報告したのに。

「琉菜、処分よろしくね」

「はーい」

 手紙を再び琉菜に返した。

 私が持ってたらもし見つかったとき言い訳できないからな。

「雪、なんかあった?」

「なんで?」

 顔には出してないはずだ。

「口調がいつもよりも柔らかいから。そういうときは大抵なんかあったときだよね」

 さすが琉菜。だてに私の側近やってないね。

「……琉菜、調べてほしいことがある」

「何?」

「幕府の研究室から薬の情報を入手してほしい。あと、一族を襲った黒幕も」

 真実を知りたい。

「……わかった」

「ありがとう」

 琉菜なら見つかることはまずないだろう。

「でも雪、それは幕府を裏切ることになるんだよ? それでも、やるの?」

 そんなのわかってるっての。

「うん。たとえ裏切ることになっても後悔はしない」

「そう。じゃあまたね、雪」

「うん」

 琉菜と別れて屯所に戻り、洗濯を再開した。