「だ、そうだ」

 えっ?

「久しぶり、雪姉」

 なんで……。

「冬……樹……」

 目の前には黒色の短髪と灰色の瞳を持つ男性が立っていた。

「また会えて嬉しいよ、雪姉」

 生きてたんだ。生きててくれたんだね。

「雪姉、こっちにおいでよ」

 えっ?

「雪姉がいるべき場所はこっち側だよ。僕等を殺そうとした人間たちのほうじゃない」

 冬樹(ふゆき)……。

「海里様、お時間です」

 宮島が急に姿を現した。

「わかった。行くぞ、冬樹」

「はい」

 なんで……なんでそいつと一緒なの! 冬樹!

「あー、最後にいいことを教えてあげるよ」

 いいこと?

「僕たち一族を襲ったのは確かに神宮寺一族だけど、黒幕は……幕府だよ」

 なっ……。

「じゃあね、雪姉」

 神宮寺たちはすぐに姿を消した。

 幕府が……一族を、殺した……。

「おい、神田。神田!」

 あっ!

「はい」

「何ぼーっとしてんだよ」

 かける言葉が違うだろ!

「土方、もうちょっと優しくなったらどうだ? そんなんだから女ができねえんだぞ」

 こんな奴を好きになる奴の顔が見てみたい。

「ああ? 余計なお世話だ。だいたい俺は女に困っちゃいねえんだよ。女のほうから寄ってくるんでな」

 はあ?

「その女、男見る目がねえんだな。それともなんだ? 女の前では猫でもかぶってんのか?」

「なんだとてめえ! お前こそ男に不自由してんだろ!」

「私は男になんか興味ねえんだよ!」

 なんなんだよ、こいつ。

「諦めたの間違いだろ」

「ああ?」

「おーい、お2人さん。何やってんだよ。そんなことしてたら傷広がっちまうぞ」

 いつの間にか永倉たちが戻ってきた。

「長州の奴らは?」

「もう全員切腹してたよ」

 生存者なしか。

「そうか。ご苦労だったな。神田、帰るぞ」

「ああ」

 私たちは屯所に戻った。

 ――「黒幕は……幕府だよ」

 ずっと冬樹の言葉が離れなかった。