京都守護職の命により、我々新撰組は九条河原にて待機することになった。

 屯所には沖田、平助、山南が残った。

 沖田は表向きは風邪。平助は念のため待機。山南は右腕を負傷しているらしい。

「……雪、眠たかったら今のうちに寝とけよ。これからは戦い続きになるからな」

 原田が気を遣ってそう言ってくれた。いつもの楽観的な声色はなく、むしろよそよそしい。

「はい。あの、原田さん」

「な、なんだ!?」

 動揺しすぎだろ。

「先日のことはお気になさらなくていいですよ。酔っていたわけですし、そういうときもあります」

「雪……」

「じゃあ私、ちょっと水分補給してきますね」

 私は水分補給するためにその場を離れた。

 その日の夜、私以外の隊士や幹部は全員眠りについた。

 ん?

 次の日の早朝、京のほうから大きな音が聞こえてきた。

「攻めてきたな」

 永倉がぽつりとそうつぶやいた。

 気づくとさっきまで寝ていた奴らが全員起きていた。

 いつの間に起きたんだ? こいつら。

「てめえら、行くぞ!」

 土方がそう声を出した。

「はい!」

 さて、殺るか。

「おい新撰組、まだ命令は出ていないぞ。勝手に動くな」

 馬鹿か、こいつら。

「攻められたときに加勢に行くのが俺たちの仕事だろ。命令があってからじゃ逃げられるか全滅かのどっちかだろうが」

 そうそう。さすが土方。

 私たちは京に向かった。

 着いたころには長州の奴らはおらず、もう攻められたあとだった。

 地面には大量の血が付着しており、多くの人が倒れている。火薬のにおいが鼻をつついた。

 ……火薬のにおいよりも血のにおいのほうが強いか。こりゃあ結構死んだな。

「どうした? 龍。顔が引きつってるぞ」

 永倉がそう聞いてきた。

 あー、顔に出てたか。

「血のにおいが強いと思っただけです」

「……そうか」

 とっとと長州の奴ら潰してえ。

「副長。朝方長州が攻めてきましたが、会津と薩摩の勢力により追い返されたようです」

 斎藤がそう報告した。

「副長、長州の残党は天王山に向かったようです」

 続いて山崎がそう報告した。

 天王山か。

「原田、斉藤、山崎、三番組、八番組、十番組はここの守備を頼む。近藤さんは京を離れる許可を。源さんはそれに付いていってくれ。あとの者は俺に続け! 天王山に向かう」

 皆それぞれ指示に従って動き始めた。