「んっ……」

 目を開ければそこは沖田の部屋。どうやらいつの間にか眠ってしまっていたらしい。

「雪ー、入るぞー」

 返事もしていないのに原田と永倉が入ってきた。

「了承してから入ってきてください」

「そんなん待ってたらいつまで経っても中に入れねえだろ」

「着替え中だったらどうするんですか?」

「そりゃあまあ、幸運だったなあって」

「最後に見たものがそんなものとは、哀れでしょうね」

 横に置いてある刀の鞘に手をかけながらそう言った。

「左之、冗談はよせ。雪怒らせると怖いんだからよ」

「あははっ、だな」

「で、どのようなご用件でしょうか?」

「お前が来ないって言うから、こっちから来た」

 ここでやるってか。

「あの、ここ一応沖田さんの部屋なんですが……。本人には許可取ったんですか?」

「ああ。ちょっと出かけるって」

 こんな時間に?

「そうですか。でも……」

「もう嫌なんて言わせねえからな。ほら飲むぞー」

 2人はどんどんお酒を飲んでいく。

 ……逃げられそうにないか。

「はあー、わかりましたよ。お付き合いします」

 渋々折れ、私も酒を口の中に入れていった。

「なあー、雪ー」

 そして飲み始めて数時間は経過しただろう。隣で飲んでいた原田は、すごく酔っている。

「原田さん、飲みすぎですよ。いい加減やめたら……」

 ドンッ!

「……っ!」

「お、おい! 左之!」

 原田から酒を奪おうと手を伸ばしたらそれを掴まれ、あげく押し倒された。

「……なんのつもりですか?」

 ギロッと原田を睨んでみるものの、酔っているせいか、効果は見られない。

「おい左之! 離れろ」

「なあ雪ー、俺の女になってくれよ」

 はっ?

「原田さん、酔いすぎですよ。そんな冗談まで言って」

「冗談なんかじゃ、ねえ! 俺あ本気だあ」

 その酔ってる状態でそんなこと言われても、説得力ないから。

「左之! いい加減にしやがれ! 悪いな雪、今日はもう帰るわ」

 永倉が無理やり原田を引きはがし、そう言って部屋から出ていった。

「ったく、何を言ってるんだか」

 そうぽつりとつぶやきながら、部屋の中に転がった器などを片付けた。

 そんなこと言われたって、答えは否定しかない。ここにいるのは、仕事だから。それ以上でもそれ以下でもない。将軍のため、それがここにいる理由なのだから。