「おーい、雪ー」

 ん?

 庭で洗濯をしていると、永倉が来た。

「どうしましたか?」

「今日の夜、俺の部屋に来てくれるか?」

「……理由を伺ってもよろしいですか?」

「ちょっと飲むのに付き合ってくれ。左之も来る」

 酒か。

「平助はいないんですね」

 酒が絡むとなればいつもその3人なのに。

「平助も呼んでほしいのか? まさか雪、平助のこと……」

「あなたの考えてるようなことはありませんよ。誤解しないでください。ただお酒を飲むときはいつもその3人なので」

「2人で飲むときも結構あるぜ? まっ、平助はまだお子ちゃまだからな」

 ふうーん。

「まあなんにせよ、私は行きませんよ」

「えー、なんでだよ」

 なんでと言われても……。

「あまり好きじゃないんです、お酒」

 仕事中ではあまり飲みたくない。

「嘘吐け! お前、歓迎会のときすげえ余裕そうだっただろうが! そんな奴が嫌いなわけねえだろ」

 まあ確かに嫌いなわけではないが。

「じゃあ苦手なんです」

「じゃあってなんだよ、じゃあって」

「飲むのは嫌だってことです」

「とにかく付き合ってくれ。華があったほうが楽しいだろ」

 強引だな……。

「私に華が務まるとは思いませんが」

「頼むよ雪!」

「丁重にお断りさせていただきます。では、失礼します」

 ぺこりと頭を下げ、私はその場を去った。