「はあ……はあ……はあ……」

 ……やってしまった。まさかこんなに早くやってしまうとは……。

 一族を襲撃されたあの日から、周囲の気配に敏感になった。いつも警戒して敵の襲撃に備えた。それは寝てるときも変わらない。そういう一番油断してるときに体に触れられたりすると無意識に刀を抜いてしまう。

「あー!」

 ――ガンッ!

 壁を思いっきり殴った。

 いい加減克服しろ。もう8年も経ってるんだ。神田一族は滅んでない。だからもういいだろう。

 ――「たす……けて……」

 やめろ……。

 ――「見捨てないで」

 出てくるな。

 ――「お姉ちゃん」

 冬……樹……。

 やばっ……意識が……。

「神田!」

 意識が離れていく寸前、そう私を呼ぶ声が聞こえた。

「んっ……」

 目が覚めたとき、私は布団の上で横になっていた。

 あれ? 私……どうしたんだっけ?

「起きたみたいだね」

 横を向くとそこには沖田がいた。

「あの……私……」

「台所で倒れたらしいよ。一君がここまで運んでくれたんだ」

 最後に聞こえた声は斎藤のものだったのか。

「……そうですか」

「何かあった?」

 その声はいつもよりも何倍も優しくて、沖田でもこんなふうに言えるものなのかと内心驚いた。

「別に何もないですよ」

「何もなかったら倒れたりしないでしょ。顔色も悪かったし」

 最近調子悪いな……。

「言いたくないなら言わなくていいけど。でも、少しは肩の力抜きなよ」

 優しく頭を数回叩かれた。

 温かい。人間は嫌いだが、このぬくもりは……好きだ。ここにいる奴らは、私の知っている奴らとは違うのか?