「ほら、傷見せてください」

 うっ……。

「本当に大丈夫ですから」

 傷なんて見せられるか!

「……そんなに見られたくないんですか?」

「当たり前じゃないですか! 自分の傷なんて、誰にも見せたくないですよ」

 ……ってことにしておこう。

「……はあー、わかったよ。じゃあこれ、自分で巻きつけて」

 沖田は包帯を渡し、くるりと背を向けた。

 見ないようにしてくれてるのか。…………出血してないと怪しまれるか?

 懐から短刀を取り出し、血が出るくらいまで斬り、治る前に包帯を巻きつけた。

「……いいですよ」

 くるりと沖田がこちらに向いた。

「やっぱり出血してる。当分の間外出禁止ね」

 ……島原以外行ってないと思うんだが。

「……はい」

 治ったと言えば出してくれるか。

「あの男たち、知り合いなの?」

 神宮寺たちのことか。

「……まあ」

「殺したいって言ってた奴?」

 覚えてたのかよ。ってか敬語外れた?

「そうですよ」

 私がこの手で、息の根を止めてやる。

「……雪ちゃんもそういう感情があるんだね」

 えっ?

「憎しみっていう感情」

「感情がないみたいな言い方しないでくださいよ」

 その通りといえば、そうだけど。

「感情、ないでしょ。ないっていう言い方は違うか。麻痺してるって言ったほうが近いかな」

 ……っ!

「麻痺、ですか……」

「喜びも、悲しみも、怒りも、君は他の人たちに比べたら薄い。まるで今にでも死んでいくみたいな」

 死ぬ……。

「知り合いに以前、亡霊みたいだと言われたことがあります」

 あれは彼女と初めて会った日だったな。

「亡霊か」

「その言葉に私は内心納得していました。この世界に生きていたいとは思っていません。死ぬときが来たら、きっと私は抗うことなくそれを受け入れる。だから、感情が薄れているのかもしれませんね」

 希望なんてものは、だいぶ前に置いてきた。

「じゃあ僕が、君の心に明かりを灯してあげる」

 はっ?

「意味わかりませんよ」

「僕が生きたいと思わせてあげるよ」

「……頑張ってください」

 そんなこと、絶対にありえない。