「……沖田さん、そこで何をしているんですか?」

 気づいたのは今さっき。……いつからいたんだ?

「気づいてたのかあ」

 沖田がこちらに歩いてきた。

「さっき気づきました。手が空いているなら平助のほうを見てきていただけますか? 私は大丈夫なので」

 先程斬られたところに布を巻きつけた。

「そっちには左之さんが行ったよ。……あー、大丈夫。左之さんは何も聞いてないよ」

 それは沖田は何かを聞いたと言っているのと同じだ。

「……どこから聞いていたんですか?」

「一族を襲ったとかってとこかな」

 まあ、まだそこならいいか。

「個人的なことですし、気にしないでください」

 さて、下に行くか。

「それはできないかな?」

 なっ……!

 沖田に壁に押し付けられた。

「なんのつもりですか?」

「君のことはほんの些細なことでも知りたいんだ」

 はっ?

「教えてくれるまで解放するつもりはないよ」

 ……なんだ、この威圧感。普段のこいつからは考えられないような……。

「近々知ることになりますよ」

 あいつらが新撰組の前に現れた時点で。

「……そう。じゃあそれまで待つことにするよ」

 沖田がそっと私から離れた。

 はあー、やっと解放された。さて、下に行こう。

「待って」

 下に行こうとしたら、沖田に腕を掴まれた。

「なんですか?」

「傷、深かったように思えたけど。床にあんなに血が付着してる。少なくとも普通に歩けるような状態じゃない」

 よく見てるな。

「そこまで深くはないですよ。1日もあれば治ります」

 たぶんもう治ってる。痛みもないし。

 何事もなかったかのように下に向かった。

「神田君! その足はどうした!?」

 近藤、焦りすぎだ。指揮官がそんなんでどうする。

「大丈夫ですよ。ちょっとかすっただけです」

「なーんて言ってますけど、彼の傷、結構深いんですよ。なので先に戻っててもいいですか? 近藤さん」

 沖田……。

「そうなのか! それはいかん。すぐに戻りなさい。総司、頼んだぞ」

「はい」

 えっ……?

「ほら、行きますよ」

 えー!?

 沖田に無理やり屯所に連れていかれた。