「神田です」

「入れ」

「失礼します」

 そう言って中に入った。

「気分はどうだ?」

「だいぶ楽になりました」

 出陣にも影響はないだろう。

「そうか。今晩出陣するが、大丈夫そうか?」

「はい」

 問題ない。

「……そうか。無理はするなよ」

「はい」

 足は引っ張らない。

「で、お前の目的はなんだ?」

「私はただ、新撰組のために動いているだけです」

 目的のためにね。

「そうか。お前に羽織を渡しておく。仕事のときはいつもこれを着ていろ」

 袖口を山形の模様で白く染め抜いた、浅葱色の羽織を渡された。

「あー、あとこれもだった」

 鉢巻も渡された。

「この件が終ったらお前に話すことがある」

 ……昨日のか。おそらくあれが将軍の言っていた薬を飲んだ奴らだろう。あんなのを戦力として加えられるわけがない。

「わかりました。失礼します」

 そこを出て、部屋に戻った。

「おかえり、雪ちゃん」

 ――「おかえり、雪」

 あっ……。

「雪ちゃん?」

 あっ!

 意識を現実に戻した。

「どうしたの? ぼーっとして」

「……いえ、なんでもありません」

 今頃なんだ。今は仕事中だ。他のことは考えるな。集中しろ。私は将軍の人形。将軍の命令にただただ従っていればいい。