「土方君」

 ん?

「山南さんか。どうぞ、入ってくれ」

 こんな朝早くに珍しいな。

「どうしたんだ? 山南さん。こんな朝早くに」

 何かあったことは間違いないな。

「昨晩、神田君にあれを見られました。彼女はそのまま気絶してしまい、今は沖田君の部屋で眠っています。倒幕派、池田屋とつぶやいていたので、監察方を一応向かわせたほうがいいかもしれませんね」

 確かに池田屋は倒幕派がよく使ってるところだからな。

「そうだな。山崎、いるんだろ?」

 天井裏から、山崎が降りてきた。

「話は聞いてたな。……頼んだぞ」

「御意」

 山崎は池田屋に向かっていった。

「……で、話を戻すぞ。なんで神田があの小屋にいんだよ」

「それはわかりません。ですが、気配がしたとは言っていました」

 気配に敏感な奴だな……。

「……まああいつも幹部だし、いつかは知ることになるからいいんだが……。気絶以外に変わった点は?」

「彼女は珍しく動揺していました。いつもの冷静さはありませんでしたね。それに彼らが、彼女を主と言ったのです」

 主?

「以前会ったことがあるってのか?」

 それで動揺したってことも考えられるな。

「そこまではわかりません。助けを求め、去り際にはまた見捨てるのかと言っていました。彼女が落ち着き次第、事情を伺ったほうがいいでしょうね」

「そうだな」

 あー、なんでこんな一気にごたごたが重なるんだ。

「副長」

 ん?

 山崎が戻ってきた。

「早かったな。で、どうだった?」

「はい。長州の奴らがいました。人数から見て、会合を行ったあとかと思われます。明日、京に火を放つみたいです。そして今晩、また会合を開くと」

 おいおい、今日動くしかねえじゃねえか。

「場所は?」

「わかりません」

 ちっ……。頭ひねらねえとな。

「わかった。ご苦労だったな。幹部を集めてすぐに動くぞ」

「はい!」

 神田。お前は一体、何者だ?