「んっ……」

 うっすらと目を開けると、見慣れた天井が見えた。

 沖田の部屋か。昨晩、どうしたんだっけ。

「気がついたみたいだね」

 沖田がおにぎりを持って入ってきた。

「今は……」

「昼過ぎだよ」

 昼!?

「土方さんに伝えることが!」

 倒幕派のこと伝えないと。

「それなら大丈夫」

「えっ?」

 大丈夫って?

「昨日君がここに運ばれてるときつぶやいたらしいよ。池田屋、倒幕派ってね。それですぐに監察方が向かって、情報を仕入れてきたよ」

 そうだったんだ。

「だから今は安心して、ゆっくり休みな」

「ふざけないでください」

 そんなこと言われて、はいそうですかなんて言えるか。

「私はもう大丈夫です」

「嘘言っても無駄だよ。顔色まだ悪いし」

 そんなにか。

「私は……」

「君は何に怯えてるの?」

 怯える? 私が?

「そんなこと……」

「大丈夫」

 なっ……。

 沖田の腕が私の首に絡まった。

「離してください!」

「うっ……」

 肘で沖田の腹に打撃を加え、彼がよろめいた瞬間に離れた。

「とんだご挨拶だね、雪ちゃん」

「私に触るな」

 人間に触れられたくない。特にここの奴らには。

 くらっ……。

 やばっ……視界が……。

 視界が眩み、私は再び意識を失った。