孤独な少女と誠の武士

「やっと来たか。さっさと座れ。神田は総司の隣な」

 はあー。どれだけ私は彼の傍にいないといけないんだ。

 しぶしぶ彼の隣に座った。

「平助はどうした?」

「もう少しで来ると思います」

 いらいらしてるな、土方の奴。

「ごめん、遅くなった」

 藤堂が勢いよく入ってきた。

「よし、全員揃ったな。食べよう」

「いただきます」

 黙々と食事を進めた。

 んっ……。この味噌汁、味が濃い。

「なあ総司、今日の味噌汁はお前か?」

 永倉がそう聞いた。

「そうですけど?」

「味濃いだろ」

 同感だな。

「そうかな?」

 そうだよ!

 そう心の中で答えた。

「雪は料理はできんのか?」

 原田がそう聞いてきた。

「はい。人並には」

「じゃあこれからはお前が作れ」

 土方がそんなことを言い出した。

「土方さん、それはきついだろ」

「構いませんよ」

 料理は嫌いじゃないし、少しでも沖田と離れられる。

「神田君、無理することはないよ?」

 近藤が心配そうにそう言ってきた。

「大丈夫ですよ」

 そんなものは不要だ。

「ってことで総司、お前もこれからは毎朝神田の付き添いな」

 はっ?

「えー、嫌ですよー」

「いいな?」

 土方が沖田をギロッと睨んだ。

 うわあー、怖い。

「明日から頼んだぞ、神田」

「はい」

 あーあ、せっかく監視から逃れられると思ったのに。

「なあ近藤さん。今夜島原で雪の歓迎会しないか?」

「おー! いいな、それ!」

「賛成賛成!」

 原田に続き、永倉と藤堂も乗り気になった。

 お前らはただ単に行きたいだけだろう。

「楽しそうだな! どうだ? トシ。たまには息抜きも必要だろ」

 近藤まで……。

「近藤さんがそう言うなら……」

 おいおい……。

「そんじゃあ今夜は島原で雪の歓迎会だ!」

 本人の意見はなしかよ! あそこ嫌いなんだけどなあ。はあー。

 心の中でため息をつきながら食事を進め、沖田は片付けがあるということで私は先に部屋に戻った。

「……いつまでそうやってるつもりですか?」

 天井裏に話しかけてみるが、応答はない。

 これじゃあまるで、私が幽霊と話してるみたいじゃん。

「出てきてくださいよ。もうとっくにばれてるんですから。……出てこないなら、こっちから行きますよ」

 短刀を取り出すと、天井裏から人が降りてきた。

「監察方の山崎烝(すすむ)です」

「神田雪です」

 こいつも私の監視役か。

「いくつか質問してもよろしいですか?」

 ん?

「構いませんよ。答えるかはわかりませんが」

 さて、何を聞いてくるんだ?

「あなたの出身はどこですか?」

 出身か……。

「江戸ですかね」

 正確には江戸の近くだが。

「あなたの目的はなんですか?」

 直球だな。おもしろい。

 自然と口角が上がった。

「言いませんよ。言ったらおもしろくないじゃないですか。それを探るのが、あなたの役目でしょう」

 まあ無理だと思うけど。

「そうですか。では僕はこれで失礼を」

 山崎はどこかに行った。

 なんだったんだか。それにしてもあいつ、おもしろいな。腹の探り合いってのが一切感じられなかった。疑問に思ったこと、知りたいことをそのまま直球で聞いてくる。あんな奴は初めてだ。だが気づけよ。すんなり教えたってことは、そんなことを知っても無意味だと言っているのと同じってことを。