「まだ夕飯まで時間があるし、ゆっくりするといいよ」

「はい」

 今日の当番は一君、だったかな? 彼の味付けは薄いから、あまり好きじゃないんだけど……。

「では一つ質問を」

 ん?

「なぜ私の名がわかったんですか? 教えてませんよね」

 ……っ! すごい殺気だ。嘘ついたら即、隠し持ってる短刀で殺られるね。

「その刀だよ。鞘に彫られているのは雪の結晶、だろ?」

 あんなのはただの勘だ。

「……鋭いですね、勘で当ててくるなんて」

 へえー、勘で当てたってわかってたんだ。

「どうして勘だと思ったの?」

「私の名を言ったとき、すごく楽しそうだったからです。試合中もそうでしたが、あなたは楽しいと思ってるときは声がほんの少し高くなる。そして、雰囲気が変わる」

 へえー、そこまで感じ取ってたか。

「その刀、そこらに売ってる物じゃないよね?」

 相当な腕の職人が作ってる。

「はい。これは私専用ですから」

 専用……その言葉の奥に隠されたものは一体なんだろう?

「そう。……怒ってる?」

「当然です。教える気なんてなかったんですから」

 あはははは……。

「ごめんごめん」

「全然反省してないですよね?」

「あはは、ばれたー?」

 彼女の洞察力は本当にすごいと思う。全ての能力がずば抜けている彼女は、それらを得る代わりに、一体何を犠牲にしたのだろうか。