だが辿り着いたのは沖田の部屋だった。

「やることもないし、ゆっくりしてていいよ」

 やることがない?

「用があるって言ってませんでしたか?」

「あー。あれ、嘘。暇だなんて知られたら手伝わされるからね」

 あー、それは面倒だな。

「そういえば君、本当の名はなんなの?」

 本当の名?

「女なのに龍って名前なわけないよね?」

 あー、そういうことか。

「言う必要はありません」

 男として動くんだし、知ってもなんの得にもならない。

「いいじゃんか、別に。減るもんでもないんだし」

「嫌です」

 誰が教えるか。

「心が狭いなあ」

「余計なお世話です」

 はあー、なんでこんな奴が上司なんだ。

「総司ー、入るぞ」

 この声は……。

「どうぞ」

 永倉が入ってきた。

「ん? なんで龍がこんなところにいんだ?」

「沖田さんのところにお世話になっているんです」

 なりたくないけど。

「そうなのか」

「で、新八さん。どうしたんですか?」

 沖田が話を切り出した。

「幹部は夕方、広間に集合だってよ」

 幹部の紹介か。

「わかりました」

 夕方ならまだ時間はあるな。

「沖田さん、道場の使用時間は決まってるんですか?」

「特にはないよ。常時開放されてる」

 へえー。

「では今から……」

「あー。でも今はやめておいたほうがいい。この時間帯は隊士たちが稽古してるからね」

 うっ……。

「では庭でやります」

「別に構わないよ」

 よし!

 庭に出て素振りを始めた。