道場内はざわついており、神田が挑発にでも乗ったのか、ある2人の隊士と戦った。

 結果は神田の圧勝。2人とも隊士の中での実力は上のほうだというのにそれをおかまいなしにあっさりと倒してしまった。

「お待たせしました、土方さん。始めましょうか」

 そう言ったときの神田の顔は、すごく楽しそうだった。

 自信満々だなあ。……もしかしたら勝つかもしれないなあ、神田。

 土方さんは試合が開始してすぐに平突きの構えになった。

 へえー、土方さんが平突きを使うなんて珍しいなあ。あれを考案したのは土方さんだけど、得意としてるのは一(はじめ)君だから。あの人は滅多に使わない。

 さて、神田はどうするかな?

 彼は平突きが繰り出されたあと瞬時に体勢を整え、ぎりぎりのところで避けた。

 へえー、あれを避けるなんてねえ……。たった数秒で見切ったのかな? それとも、一君が結構使ってるから情報が流れてるのかな?

 それから彼はずっと土方さんの攻撃を受け流しているだけで、自分から仕掛けることはなかった。

「これで終わりだ」

 また土方さんが平突きを繰り出した。

 でも彼は動かずにその場に立ち尽くしていた。

 どうしたんだろう?

「な、に……」

 神田はそれをあっさりと受け止めた。

 嘘……。

 彼が土方さんの後ろに移動した頃、土方さんは右足を抑えて跪いていた。

 足に打ち込まれたのか。それにしても……速い!

「勝者、神田」

 土方さんが負けるほどの凄腕。こんなにわくわくするのは久しぶりだ。見た目の華奢な姿からは想像つかない豪胆な刀を振るう様子。土方さん以上の速さと洞察力。彼と戦ったらすごく楽しいだろうな。

「ねえ君、僕と勝負してみない?」

 そのわくわくを抑えられなくて、僕は彼に試合を申し込んだ。

「私は構いませんが」

 久しぶりにわくわくできそうだ。