僕は君を愛しているんだ。

暗い瞳の僕は淡々と思考を巡らせ、
痛々しい愛情表現を繰り返す。
とはいえ痛いのは自分自身ではない、
目の前の相手が表情を歪ませるから
これはきっと“痛々しい”のだ。
興奮が思考回路を歪ませ、
快楽が全てを安堵に変え、
愛情がそれらと相まってしまって
僕は君にかぷりと歯を軋ませる。

「痛い、どうして噛むの?」

乱れた相手が僕を見るんだ。
先程まで恍惚に頬を染めていたのに、
混乱やら痛みやらで僕を、
疑うようなそれでいて軽蔑したような
それこそ、痛々しい顔で見る。
それなら君こそどうして、
僕をそんな目で見るの。

「僕は君を愛しているんだ。」
「意味がわからない、愛しているんなら、どうして噛むの。」
「………………。」

昂りが衰退していくのは、
こうもわかり易く単純な感覚か。
僕が噛み付いた跡を掌で撫でながら
身体を起こした君は僕を見ない。
呆れたのだろうか、はたまた軽蔑か。
身体の熱が徐々に冷める。
口を開いた相手が溜息と言葉を吐く。

「俺、そういう趣味ないし。普通じゃないっていうか、」
「何のこと、」
「いや、ヤってる最中に噛むのとか。痛いし、萎えるって…しかも本気で噛まれたらさぁ…」

どうやら僕は、普通でないらしい。