拓夢が中村先生の顔を見て口を薄く開いた。
「兄さん、隣にいる女の子は誰なの……?」
真っ直ぐ拓夢の顔を見ている中村先生。
――その質問を拓夢にされたら、どうしようかと実はさっきから何パターンか考えていたが……、どれも良くないんだ。
俺の生徒だと言えば拓夢はぶったまげるだろうし。
二戸 梨杏のことを俺の彼女という事に……、いやそんな嘘はすぐに見破られる。
俺の妻、絶対にあり得ない!
二戸 梨杏が困った顔で中村先生の顔を見上げている。
――ねぇ、先生、私、誰って事にしたらいいの?
先生の彼女、奥さん、ウフッ。
やっぱり、先生の妹――。
だけど、先生の実の弟が目の前にいるのに“先生の妹”なんて絶対に変だよね。
中村先生が二戸 梨杏の顔を見た。
――俺は、どうして二戸 梨杏の存在を必死に隠そうとしているんだ。



