こんな事をしてもらったの、俺初めてで――。
完全に心を打たれている、俺。
まったく、どんなリアクションをすればいいんだ。
俺をいつも悩ませる二戸 梨杏。
さっき、二戸 梨杏がケチャップを貸してと俺に必要以上にしつこく催促をしてきたのは、これをしたかったからなのか。
二戸 梨杏に視線を向けた中村先生。
ケチャップのかけ方に拘りを持ち、マジッ、本気で怒りかけた自分に今少し腹が立って後悔をしている。
――マジッ、わりぃーー。
俺が仕事で帰った時、“ありがとう”や“おつかれさま”と言って出迎えてくれる人は今まで誰もいなかった。
二戸は、俺の堅物なハートを温かくしてくれる不思議な魔法を知っているんだな。
こんな事をされたら、こっ恥ずかしくて、照れくさくて、たまらない。



