メイド服の右腕のブラウスの袖口のボタンがちぎれかかっていることに気づいた中村先生。




ズボンのポケットから簡易の裁縫道具を取り出す。




「お前って、本当に世話のかかるやつだなぁ──」




中村先生が器用に縫い付ける。




「動くなよ、危ないから」




「はいっ」



「はいっ、できあがり」



「先生、ありがとう」



中村先生が笑う。




私が1番好きな中村先生の顔だ。



私は、先生の笑ってる顔が、1番好き。



じっと見ていると、透き通ってキラキラしている中村先生の綺麗な瞳にスッーと吸い込まれてしまいそう。




やっぱり、どの角度から見ても先生の顔がかっこ良すぎて、ドキドキする。





こんなに近い距離なら、なおさら、ドキドキして。




私の心臓の音が先生に聞こえたら──、どうしよう。



「何、俺の顔をじっと見てるんだよ──?





「べ、べつに……」





「はい、世界一可愛い、メイドさん。教室、戻ってこい。きっと、皆、待ってるぞ──」




「じゃあ、私、行ってきます!」



「ああ」



元気な足取りで保健室を出ていく二戸 梨杏の後ろ姿を中村先生が柔らかな瞳で見守るように見ている──。



少し寂しそうな表情を浮かべる中村先生。



俺が作るご飯を食べて、成長して、
いつか、こんな風に二戸は俺がもとを去っていく日が来るんだろうな──。