だけど、あの時、拓夢を守る為の部屋は、あの部屋しかなかったんだ。
拓夢が機転を利かして二戸をクローゼットに匿っていてくれていなかったら、と考えると。
拓夢があの時にいてくれて、本当は良かったのかもしれない。
拓夢も二戸も本当に無事で良かった。
穏やかな表情の中村先生。
「拓夢、あとは親父を頼んだぞ」
「うん。兄さんの家に、また行ってもいい?今度は、家出じゃなくて。遊びにね」
「俺の家には、可愛い妹がいるから。さぁっー、どうしようかなぁっ……?」
と、惚けながら中村先生が腕時計を見る。
「あっ、いけねぇ、学校に早く行かないと。俺、遅刻するわ」
兄さんって、やっぱり、わかりやすいーー。
拓夢が笑う。



